容器の値段
マーマレードが大好きである。
ちょっとまえまでは10枚切りのサンドイッチ用にスライスした食パンをカリカリにトーストし、バターとマーマレードをたっぷりつけてミルクティーといっしょにいただくのが朝食の定番になっていた。
とにかく、毎朝、これがないと始まらない。あのオレンジのフレーバーと甘さ、それからバターの風味と塩味が微妙に混ざり合った味が、カリカリにトーストされたパンの香ばしさといっしょに口の中に広がったときの幸福感は何物にも代えがたい。自分にとってはほとんど麻薬なみの効果と習慣性があったように思う。その味がまだ口の中に残っている間に、濃い紅茶にたっぷりの砂糖とミルクを入れたミルクティーを口に含むと、そのほどよい渋さとミルクのまろやかな味が、マーマレードとバターの余韻をくるむようにしてのどの奥に流し込んでくれる。
この快感はもう完全に、病みつきという言葉が当てはまるくらいの嗜好になってしまい、かつて、ほぼ1年近く朝食はこの組み合わせだけで通しきったこともあった。
これを知った嫁さんが、さすがに健康を心配したのか、バナナをオーブントースターで焼いたベークドバナナを勧めてくれて、最近はこれを食べている。バナナは熱すると持っている酵素が働いて、人間の免疫力を高める効果を持つようになるのだそうだ。それに、焼いたバナナは甘みも増して想像以上においしいので、これもまた定番朝食のレパートリーに加わった。
それでも、やはり一週間に2回はマーマレードとバターをたっぷり塗ったカリカリのトーストとミルクティーを食べないと調子が出ない。だから、冷蔵庫にはいつもバターとマーマレード、それから冷凍室にサンドイッチ用の10枚切りパンをストックしてある。パンは冷凍しておいて、そのままトーストする。そうすると風味が全く落ちないので、たまにしかトーストを食べない場合はとても便利なのだ。
マーマレードはいつもスーパーマーケットで購入する。たいていは、パンのコーナーか、ジャムやスプレッドといっしょに並べられているのだけれど、いつも不思議に思うのはその値段のことだ。同じメーカーの同じ瓶詰めやペーパーカップ入りのものなら、ママレードとブルーベリーとイチゴのジャムの値段が同じなのだ。ほかにもイチジクやリンゴやカシスやいろいろあるけれど、みんな同じ値段であることが多い。これが、どうも気に入らない。
というのは、マーマレードはオレンジの皮からつくる。本来ならジュースを取ったりしたあとに捨てる部分だろう。それが、イチゴやブルーベリーやリンゴやイチジクやカシスなどの実の部分からつくるジャムと同じ値段だというのはどうしてなのだろうか、と思うのだ。たかが200円程度のものに、そんなに目くじら立てなくてもいいだろう思われるかもしれないけれど、毎日食べる身近なものだけに、よけいに気になる。
しかし、いろいろ考えているうちに、よほど特殊で高価な材料ではない限り、ジャムやマーマレードの原価はその加工賃が大部分を占めるのではないかということに思い当たった。材料を選別し、洗浄し、鍋で煮て瓶に詰める手間のほうが大きいのに違いない。自分が家庭でジャムをつくる場合はこの労働力のことを意識していないから、すぐに材料費のほうに気を取られてしまうが、本当は人件費が製造原価の大きな部分を占めるのだ。これは、なにも食品に限ったことではない。
ただ、ジャムやマーマレードのような保存食品の場合、製造原価のうちに占める部分がもっと大きい要素がある。それは瓶やカップなどの保存容器だ。缶詰や缶ジュース、ペットボトル入りのジュースなども同じ事が言える。その証拠に、どんな缶ジュースもペットボトル飲料も値段はほぼ同じに設定されている。これは、人件費や流通費用と容器の値段の製造原価に占める割合が圧倒的だと言うことを物語っている。
実際、調べてみると、缶に限らず包装容器の値段というのは想像以上に高い。
たとえば、環境省の資料では、350mlのアルミ缶が28円、1リットルのペットボトルが47円。奈良県生駒市の広報では、飲料用ペットボトル1~2リットルが47~62円、飲料用アルミ缶、スチール缶350ミリリットルは28円、飲料用紙パック(牛乳パック)1リットルは10円、食品トレイ白色が4円、色付きが15円、卵パックは1円、シャンプー用ポンプ式ボトルは137円となっている。
缶ジュースの場合、販売価格を120円とすると、流通費用と販売コストが70円程度を占める。だから缶ジュースの原価はだいたい50円。そのうちほぼ30円が缶の値段で残りの20円が中身の値段。さらにその中身の値段の中に製造加工の設備機械償却費と人件費が入っているわけだから、原材料の値段は10円以下だろう。つまり、原材料の占める割合は8パーセント程度しかないわけで、この値段が多少高かろうが安かろうが、販売価格に大きく影響することはないということだ。
そんなわずかな差を、販売価格に反映させて、1円単位で値段を変えたりしたら、かえって流通コストがかかるのにちがいない。だから、缶ジュースもジャムやマーマレードも中身がどんなものであっても、だいたい同じ値段に設定されているのだ。
もちろん、非常に特殊で高価な材料であるバラの花びらのジャムなんてものは別格だ。そういうものは、もともと一般のスーパーで売られるようなものではないし、初めから販売経路も購入者の層も違うのだから、一緒に考えてはいけない。問題にしているのは、私のような庶民がごく普通に消費している一般的な食品についてのことだ。だが、そういう製品だからこそ、原価は製造コストぎりぎりでつくられている。その中での原材料の占める割合が非常に低いからこそ、種類が違っても販売価格が同じという現象が起きる。
ただ、どんなジャムやマーマレードやジュースなどの保存容器入りの飲料も、商品である以上はコスト割れしないように原価を計算しているはずだ。だから、おそらくは一番高い原材料に合わせて原価を設定しているのに違いない。だとすると、やっぱりマーマレードはほんのわずかだけれど、値段が高めに設定されているはずということになる。
みみっちいと思われるかもしれないが、マーマレードファンとしては、やっぱりなんとなく納得のいかない気分はぬぐい去りきれない。かといって、安売りのマーマレードを買うことは禁物である。容器の値段や製造コストは変わらないのだから、値段が安くするには原材料の質を落とすしかない。だから、こういう安売りの品を選ぶときは、ラベルの製造原産国や成分表をよく見て判断することが一番大事なことはいうまでもない。
ある意味でマーマレードやジャムほど、その風味に優劣のあるものも少ないと思う。安物買いは、ぜったいの銭失いになることだけは保証する。マーマレードフリークからの忠告である。


化粧品も同じですよね。
化粧品の場合、容器も、ファッションの一部だから、
容器代を払っているようなものだ、
と聞いたことがあります。
マーマレードフリークからのご忠告、
しっかり、受け止めましたー(#´艸`)プププ
投稿: くま | 2007年1月23日 (火) 20時36分
くまさん、
あれま、化粧品もそうでしたか。
化粧品の場合は中身よりも容器代の方が高いのではないでしょうか?
マーマレード、おいしいですよね。自分でつくるときは残留農薬がとても気になります。
投稿: skt48 | 2007年1月23日 (火) 22時44分