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2007年1月25日 (木)

んの発音

フランス語を勉強していちばん困惑したのが「ん」の音と「ら」行の音だった。
フランス語ではHは発音されない。そのかわりにRの音がまるでHのように聞こえる。
これは、舌を丸める代わりに、口の中いっぱいに広げ奥の方を膨らませてRの音を出すからで、聞きようによっては、Hに近い擦過音になる。この音を出すのと聞き分けるのが一番やっかいだった。
しかし一般には「ん」の音の方がよく話題にされる。あの鼻に抜ける独特の音が、フランス語の雰囲気を醸し出しているといってもいいからだ。この音も日本人には難しいと言われている。それには理由がある。日本人の「ん」の発音は、実は音声学的には4通り以上もあるのだ。
「ん」の発音は、前後に続く音や発音速度との関係で舌の位置が変化することによって、明らかに違う音として発音される。しかし、我々はその音をすべて一つの音として認識しているということらしい。日本人に、LとRの区別がつかないのと同じ理屈だ。
しかし、「ら」行の音の場合は、もともとRに近い発音しかないということが区別のつかない理由だけれど、「ん」の場合はちょっと事情が異なる。
先に触れたように、我々が発音する「ん」の音は、前後の音や速度、話者の癖で実にさまざまな音として発音される。その中には、フランス語の鼻母音のような甘く鼻に抜ける音もしっかりと含まれているのだ。
音声学的にはいろいろと難しい定義があるが、わかりやすく整理しなおすと、次のようになる。ただ、これは正確なものではない。どちらかと言えば、後続音によって音が変化するということを意識した方がいいかもしれないのでご注意のほどを。
「ngの”ん”」― 例:考える ングと発音
「nの”ん”」 ― 例:簡単 舌が上の歯につく
「mの”ん”」 ― 例:乾杯 唇がくっつく
「無音の”ん”」 ― 例:関心 唇も舌もどこにもくっつかない
このうち、フランス語のnの音に近いのは「無音の”ん”」だ。この場合は、先行母音の口の形、舌の位置のまま鼻に音を抜くことによって「ん」の発音をする。だから、もし、後続音がある場合は、この甘く鼻に抜ける音ではなく、日本人が一般的に考えている「ん」の音のように舌が口の中のどこかにくっついた発音となる。
ところで、このフランス語のnの音だが、実は関西人にとっては非常に耳慣れた発音しやすい音なのだ。実際、自分がたまたま関西人であったことが幸いして、フランス語を勉強するとき、この音に関してはまったく違和感がなかったのに、ちょっと面食らった覚えがある。
たとえば、標準語の「○○をしたんだ」という表現は、関西弁では「○○したねん」または「○○してん」というふうになる。このときの最後の「ん」はすぐ前の「ね」や「て」の口の形のまま鼻に抜いて「ん」を発音する。表記的には「○○したねン」、「○○してン」という感じになるのだろうか。
そのほかにも、自分で意識して発音したり、他の関西人ネイティブの会話を聞いていると、「ん」の音が単語の途中に来る場合も、この発音の仕方に引っ張られてか、しっかりと口を動かさず、鼻に抜ける音で発音することも多い。これは、話す速度が速いことにも影響しているのだろうと思う。
だから、関西人の発音で特定の言葉を言ったとき、それがそのまま綺麗なフランス語に聞こえるなんて事も起こりえる。たとえば、標準語で「何しているの?」というのを、関西弁では「なにしとンのン?」というが、この「とンのン」というのが、そのままフランス語でton nom(君の名前)と聞こえてしまう。ちなみにフランス語の単語の最後に来るmの音は鼻に抜けるnの音と同じ音である。
だから「捏ねているのか?」というのを関西弁で言うと「こねとンのン?」で、そのままconnes ton nom? つまり、「(彼は)君の名前を知ってるのか?」といっていることになる。
英語にも、What time is it nowを「掘った芋いじるな」と読みなす話があるけれどこれはなんとか想像できるかなというくらいのものだ。しかし、このフランス語の方は、本当に綺麗な発音として通じてしまうから、関西人の方は是非試してみる価値があると思う。
たかが、「ん」の発音だけれど、よくよく注意して聞いたり発音したりすると、意外なくらいに複雑な音なのだなと気付かされる。語学の勉強をする場合は、そんなことにいちいちかまわずにどんどん読み、書き、しゃべることが大事なのだが、私の場合はこういうところでおもしろがってしまうから、いっこうに語学の勉強がはかどらないのかもしれない。

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コメント

「ん」の発音、これ、沖縄でも違うんです。

「ん」を言う場合、普通、口を閉じているけど、

沖縄の場合ね、
口を少し開けて、
舌の先端を上アゴの、前歯の後ろに、
くっつけるようにして、
「ん」を発音するんですよ。

普通に「ん」をいうと、
「う」に聞こえるとか。

ほかにも、やっぱ、
口の開け方が違うな~と思うときがあります。

方言はマネできるけど、
イントネーションって、
マネできないことが多く、
「ん」の発音の仕方を聞いて、
口の開け方や、口腔内の舌の動きで、
作られるんだなぁと思わされました。

くまさん、

沖縄の方言は、古代の大和言葉と似ているところがあったりするそうですね。

んの発音も違うとは、興味深かったです。

方言って、ほんと、まねることは出来てもイントネーションや本来の発音までまねるのは難しいですよね。

その点、標準語というのはほんとに敷居の低い言葉だと思います。それだけ、文化的に高度化されていないということなのかもしれませんが。

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